東京高等裁判所 昭和30年(う)1722号 判決
被告人 橋本広
〔抄 録〕
被告人の控訴の趣意及び弁護人の控訴の趣意中事実誤認の主張について。
原判決挙示の証拠を綜合すれば、原判決認定の事実、すなわち被告人が原判示日時頃判示の場所で吉岡勝子を強いて姦淫し、かつその際法定の除外事由なく匕首類似の判示刺身庖丁を携帯していた事実を認めるに十分であり記録を精査検討しても原判決に事実誤認乃至審理不尽の疑は存しない。なお本件刺身庖丁が刃渡十四センチメートル余であることは被告人所論のとおりであるが、刃渡十五センチメートル未満の匕首又はこれに類似する刃物は業務その他正当な理由による場合の外携帯することができないことは銃砲刀剣類等所持取締令第一五条の明定するところであるから、被告人が何ら正当の理由がなく匕首類似の本件刺身庖丁を携帯した以上到底処罰を免れないものといわなければならない。次に弁護人は本件で使用されたのは刺身庖丁であるから匕首類似の刃物ということはできないと主張するけれども、押収にかかる本件刺身庖丁を検するに、その形状、特にその刀身の部分は従来一般に刺身庖丁として市販されているものとは異なり、全く匕首類似の形態を具えていることは明らかであるから、これを銃砲刀劍類等所持取締令第一五条にいわゆる匕首に類似する刄物というに少しも妨げないものといわなければならない。畢竟論旨はいずれも理由がない。